君に疵を残すのが、この手だけであればいい
「…本当に、それでいいのか?」
夜を駆ける車の中。リアシートに並んで座る赤子にかけられた、もう幾度目になるともしれない質問に、少女は今まで通りにこくんと小さく顎を引いて。
これが、私の望み。
胸元に三叉の槍の穂先を抱いて、少女はひどく幸せそうに瞳を伏せる。
「私は骸様が好き。ボスのことも、好き。だからどちらも、失えないの」
告げる髑髏の耳に届くは抑えた長嘆息。その、まるで赤子らしくない諦めを込めたため息に、ほんの小さく口元を綻ばせて。
「ありがとう、やさしいのね」
骸様達が言っていたのとは、大違い。
「女には、優しくするのが俺の流儀なんだ」
ひどく気障な風に帽子の鍔(つば)に指をかけて片頬を歪めてみせた赤子に、髑髏はふふ、と吐息だけで微笑んでみせた。
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