願望充足型の悪夢
がんっ!
壊れそうな音を立てて、教室の扉が開かれる。
それなりの静寂に包まれながらも小さくざわめいていた授業中の教室は、突如響いた破壊音に瞬時に静まり返り、そして外から開いた扉の外に立っていた人物を認めるなり、音だけでなくその動きまで時が止まったように停止する。
やや伸びすぎた感のある柔らかげな黒髪に縁取られた端正な美貌に、反するような鋭利に過ぎる眼差しの漆黒の瞳。しなやかな痩身を黒のスーツに包んだその人物は、今この場所にいるはずのない人物。
「―――ヒバリ?」
唯一、暢気な響きでその名を呼び得た山本すら、どこか唖然として。
―――三年二組の教室の外に立っていたのは、去年卒業したはずの元風紀委員長・雲雀恭弥だ。
しかし、教室中の空気を凍らせた本人はと言えば、山本の呼び声など聞こえなかったと言わんばかりに不穏な空気を纏ったまま、無言で鋭い切れ長の瞳が広くもない教室内を流し見て。その瞳が、ある一点で止まる。
窓際から二列目、一番後ろの座席。
その座席に座る綱吉は、雲雀を見つけた始めこそ飴色の瞳を他の生徒たちと同じく呆然と丸めて、唖然と教室の後ろ扉の前に仁王立つ青年を見つめていたけれど、さすがに強い漆黒の双眸が真っ直ぐに自分を捉えたことを悟ると、その頬を盛大に引き攣らせる。
雲雀が現れた時点で、九割方覚悟はしていたはずだったが。
怯えにも似た焦りを浮かべる綱吉に、けれど雲雀は構うことなどなく。
「沢田綱吉」
低くよく通る声が、間違いようもなく綱吉の名前を呼び。スラックスの脚が淀みなく教室を横切って、綱吉の元へ。
教室中から注がれる恐怖と不安とほんのわずかの好奇心の交じり合った視線を一身に受ける当の綱吉は、突如展開される予想外の出来事に全くついていくことができず、ただ恐怖に引き攣った顔に冷や汗を浮かべるのみで。
この人物に関しては、授業中とはいえ、教壇に立つ教師すら当てにならない。
授業を妨害した青年を止めることすら思い付かぬ教師の姿に、怯える自分を棚上げして思う内に、黒のスーツに身を包んだ人物はすぐ傍まで近付いていて。
そして。
ガタン!と。
静寂に響く、硬い音。
倒れた椅子が床にぶつかった音は、静まり返った教室に痛いほど大きく響き。
「…テメェっ!!」
その音に、我に返ったように響き渡った声は、前列の方に座る獄寺のもの。
その次の瞬間には、教室が揺れるような低い衝撃音が。
「っ、!!」
叩きつけられた、教室の後ろ壁。
胸座(むなぐら)を掴んで引きずり上げられ、そのまま放り投げるように背中から教室の後ろの壁へと叩きつけられた綱吉は、一瞬息すら止まるほどの痛みに声すら出せず目を剥いて。それから、ずり落ちそうになる身体を投げた本人に無理矢理押さえつけて立たされたまま、小さく咳き込む。
繰り返される空咳と、それによってもたらされる痛みの連鎖。
その合間、涙に滲む視界に焼きつく、鮮やかに冷えた漆黒。
―――そしてその、向こう。
「獄寺くんっ!」
叫んだのは、雲雀の肩越し。ダイナマイトを取り出しながら駆け寄ろうとしていた友人の名。黒に滲んだ視界の端に、銀灰の髪と灰緑の瞳の色味の派手やかさばかりでなく、殺気立ったその気配までもが鮮やかで。
「獄寺くん、ダメだっ!それから、山本、もっ!」
声を出すたびに痛む背中やら胸郭やらを全て無視して。
静寂に張り上げる声は、制止の言葉。
鮮やかな敵意で向かってくる獄寺と、その気に紛れて物騒な気配をわずかに洩らす、山本と。
「ですが、十代目っ!」
「ツナ」
「大丈夫」
間髪入れず呼ばれるのに、黒いスーツの肩越しに小さく笑む。それは多分に、情けなく痛みに歪んだものだったろうけれど。
「…大丈夫、だから」
繰り返して、小さく深呼吸。
束の間の静寂に、再び恐怖と不安とに張り詰めた空気の中。
制服の袖に包まれた細い腕を、綱吉はゆっくりと持ち上げて胸元を押さえつける雲雀の指先に触れる。
「ヒバリさん、…大丈夫です」
逃げません、から。
告げて、さして力も入れずその腕を放して。
「すみません、えーと……。早退しても、いいですか?」
告げた綱吉に。
教壇に立ち尽くしていた教師は、呆然と、けれどしっかりとした動きで頷いて。
「お待たせしました。―――何の用、ですか。ヒバリさん」
強い光は、覚悟の色。
その光の中に、ほんのわずか、本物の疑問と困惑とを浮かべて。
教室を出てすぐの廊下、真正面に冷えた美貌を見つめながら綱吉は静かにそう、切り出した。
* * *
「本当に、仕事早ぇーな…」
目が覚めて、すぐ。リボーンの忠実な相棒であるカメレオンは、口に咥えていた封筒を相手の小さな手の中に落とす。
それは、航空チケット用の紙封筒。
印字されている社名のロゴは、アリタリア航空。
「アリタリア…ボーイング、か」
記憶を辿りながら一人呟き、中に収められているチケットを確認すれば、B(ボーイング)‐七四四―――思った通りの機名。
思わず零れるため息は、よく取れたものだという感心にも似た呆れ。確かにバカンスなどの時季は外しているが。
「…明日、か…」
早過ぎるだろう、と思うわなくはない。
日付が、ではなく。依頼から、この『チケット』が自分の元に届くまでの日数が、だ。
十月四日、成田空港一三時四五分発、AZ‐七七八九便。ローマ、レオナルド・ダ・ヴィンチ空港を経由して国内線を乗り継ぎ、シチリア州都パレルモ、ファルコーネ・ボルセッリーノ空港着が二一時〇五分。そして、空港からボンゴレの居城まで、車を飛ばして約二時間。
向こうに着くのは、恐らく真夜中だろう。
上手くいけば。
「アイツ、ウルセーだろーな…」
やった者勝ちだろうと思う気持ちがないわけではないが、むしろ望んでいたのは綱吉で、リボーンにとってはこのチケットを使わないままの、今の展開こそ願ったり叶ったりなのだ。
それが、綱吉の意図に反していても。
―――何処かの誰かの掌の上と、分かっていても。
けれど、綱吉の想いを、選ぶ道を、優先したいと思う程度には自分の教え子に情は移っている自覚はある。
死んでしまった少女の名を呼び、忘れ得ぬはずの青年を忘れた瞳で、忘れた記憶で、世界を映し見ていた飴色。
―――六道骸をして、誰だと問うた、少年。
「……ロクでもねぇ策、弄しやがって…」
呟く声が向かうのは、琥珀めいた飴色の瞳の教え子ではなく、皮肉な笑みの印象ばかりが強い、色違(たが)えの瞳の青年。
六道、骸。
仕事を寄越せと言った口で、銀貨を求めていないと告げた瞳で、呆気ないほどあっさりと、綱吉の首筋に三叉槍を突き付けてくれた。
雲雀と共に綱吉の護衛の任を与えた、リボーンの目の前で。
裏切ったのかと詰め寄ったリボーンに応じることなく消え去った青年の傍、横たわっていた綱吉は、まるで死んだように―――、ただ眠るだけ、で。
けれど、ただ眠るだけかと思えば、その記憶はいつの間にか、骸の存在を跡形もなく消し去ってしまっていて。
傷つけたのか、守ったのか。
裏切っているのか、いないのか。
どこまでが真実で、どこまでが嘘なのか。
忠誠ではなく取引で、与えられただけの霧の守護者の名のままに、虚実入り乱れるその行動の真意は知れなくて、リボーンですらも読み切れない。
分かるのは、綱吉がボンゴレ十代目を継ぐ覚悟の一端であり、最たる部分が消えてしまったということ。
ボンゴレ十代目が現状、消えてしまったという事実。
それが、『誰』の願ったことかは知らないが、イタリアの辺りでは喜ぶ輩がさぞ多いことだろうということだけは想像できる。
だからこそ、骸の真意が窺い知れず。
そして―――、
「ダメツナの奴、何考えてんだ…?」
骸を誰だと問うた口で、けれどあの教え子は、未だ、何故いま、イタリアへ飛ぶのだと問うことは、ない。
そして恐らく、これからも。
* * *
「何の用、ですか。ヒバリさん」
そう切り出した綱吉の真っ直ぐの瞳に、
「正門前の女、何?」
眇めた漆黒の双眸で不機嫌に告げられる台詞に、対峙する飴色がきょとりと瞬いて。それから、悩むようにきつく眉間が寄せられる。
「…? あ、もしかして。凪、ですか?」
廊下の壁を背にしたまま、恐る恐る、上目に窺うように綱吉が問えば、
「さあ?僕はそんな名前は知らない」
「…一応もう、五年目の付き合いなんですが…」
「だから?」
「……なんでもないです……」
剣呑な眼差しに、あっさりと綱吉は突っ込むのをやめる。
そんな綱吉を睨むような探るような切り込む視線で見据える雲雀が、一言。
「君に言われたくはないけど」
試すような、その言葉に。息を呑むのは、言われた当人ではなく教室から丁度出てきたところらしい獄寺と山本の二人。食い入るように二人を見つめた二対の瞳が、耳に入ってきたその言葉に見開かれて。
「え?」
瞬いた目で首を傾げるのは、綱吉。
「ヒバリっ!」
その声を掻き消すように響いた切羽詰った怒鳴り声は、獄寺のものだったのか山本のものだったのか。
え?と、もう一度呟く綱吉を見据えたまま、甘やかし過ぎだよ、と小さく雲雀は呟いて。
「ねぇ、」
「それは君の選んだこと?それとも の選んだこと?」
まるで、音飛びしたテープのように。
雲雀の声が途切れる。
途切れて、綱吉の耳に届く。
何、と。
問い返す自分の声もまた、遠く。
「君がボンゴレを選んだのはどうしてだった?」
最後の最後。
狂った聴覚と平衡感覚に遠退く意識に、綱吉はその声を聞く。
耳の奥に注ぎ込まれた言葉は、無意識の内に綱吉の裡に刻み込まれて。
「十代目っ!」
「ツナっ」
静まり返った授業中の廊下。
獄寺と山本の叫び声が、鋭く空気を切り裂いた。
「ヒバリ、テメーっ!!」
「おいっ!獄寺!!」
怒鳴り声を上げて雲雀へと襲い掛かるとする獄寺の肩を寸でのところで掴んで止めて、山本はどうするべきかと眉根を寄せる。
元来、頭を使うのは得意ではないのだ。分かるのはただ、今の獄寺の行動を綱吉は断固として止めようとするだろう、ということ。
それすらも、あくまで想像でしかないが。
「ねぇ」
肩越しに向けられる双眸。その腕の中にくたりと力を失った綱吉を支えたまま、雲雀は山本と獄寺を見据えてくる。
何の対抗意識を燃やしたのか、また急に力を増した獄寺の身体を半ば羽交い絞めにして力尽くで押さえ込みながら、山本はとりたて険呑でもなく、何だ?と返す。
「君達は、どこまで分かってるの?」
冴え冴えと、鋭い瞳。
目的語の抜けた問いに、山本ははぁ?と思い切り首を傾げるが、雲雀の腕の中の少年を目に入れると、何となくその意図が分かったような気がして、込めた力に途切れがちになる言葉で雲雀に返す。
「分かっ、てる、つーか…。ツナ、骸のヤ、ツのこと、忘れちまったんだろ?ん、で!あの、髑髏って女の子の、こと、を、骸だと思ってるってーか…?…っ違うか」
「……」
「骸、だって思ってる、わけじゃなくて、辻、褄の合わない部分を、置き、換えてる、っつーか…オイ獄寺!」
「ウルセー!テメー山本っ!なに暢気にくっちゃべってやがるっ!離しやがれっ!!」
「無理言うな。お前、離したら雲雀に喧嘩ふっかけに行く、っだろっ」
暴れる獄寺を押さえながら(出会った頃より体格差が格段になくなってきているため、この頃では力尽くといっても一苦労だ)、雲雀への答えを一時棚上げして山本は獄寺に応じる。気持ちは分からなくもないが、まさか雲雀と、しかも授業中で廊下に他の人影がないとはいえ教室のすぐ外の廊下で闘(や)り合うわけにもいかないだろう。
何より綱吉は、絶対に望まない。
それに。
「ねぇ、君は。獄寺隼人」
山本の返答にふぅんと面白くもなさげに小さく呟いた雲雀は、今度はおもむろに獄寺へと水を向ける。
その風情に、全くに、殺気も敵意も感じられない。
隙があるのかと問われれば答えは完全に否であるし、纏う空気にも好戦的な色。それでも積極的にこちらを痛めつけようという風ではないようなのが、山本にはずっと引っかかっているのだ。
それは綱吉に対峙していた時も。
距離もあったし、雲雀の背に遮られてしっかりと見えたわけではないけれど、綱吉が倒れる時、雲雀は支える手を出す以外の行動をとっていたようには見えなかったのだ。
そんな雲雀の様子に気付いたのか、それとも頭の回転の早い獄寺のことであるから、他の意図に気付いたのか。
山本の腕の中の獄寺が訝しげに身動きを止めて。
「…ぁあ?んなもん聞いて、どーするって…」
睨み上げるようにドスを聞かせた声で問いかける獄寺の言葉を遮るように、雲雀の冷えた声。
「関係ないよ。君はただ、答えればいい」
「っテメ…!」
「おいっ!獄寺っ!ヒバリっ!」
再び暴れようとする獄寺の腕を掴んだ、その次の刹那。
「どうしてこの子は、イタリアへ行くのをやめないんだろうね?」
雲雀のよく通る声が、問う。
その、内容。
「……………は?」
間の抜けた返事を、それでも返せたのは山本。
雲雀の視線は、二人から腕の中に抱える、蒼白い顔で眸を伏せる少年へと向けられている。
つまりは、『この子』が示すのは綱吉だと、いうことで。
それはあまりに当たり前で、雲雀こそ、どうしてそんなことを問うのか山本にも獄寺にも、知れない。
どうして、も何も。
イタリアへ行くと決めたのは、綱吉だ。
ありありとそんな考えの読める二人の表情に、面倒臭げな風情で苛立たしく瞳を眇めた雲雀が、もう一度同じ言葉を繰り返す。
「どうしてこの子は、イタリアへ行くのをやめないのかな。この状況で」
この意味が分からないくらい馬鹿で鈍感なら、仕方ないけど。
淡々と、それでもどこか見下すような色を込めて投げかけられた疑問符のない問いかけは、けれど山本には漠然とした不安感以外の感情を齎(もたら)さない。
不安感、不安定―――齟齬。
どれもしっくりとは来ないが、得体の知れぬ不快だけが胸に残る。
そもそもどうして、そこでイタリア行き、なのだ。雲雀は、綱吉の記憶から消え去った男について問うていたはず、ではないのか。
思うのに、やはり胸の内に残る違和感。
何かがおかしいと、告げるのは本能にひどく近い部分だろうか。
しかし、首を傾げる山本とは対照的に、しばし思考するように顔を伏せていた獄寺は、次の瞬間、銀灰の髪を揺らして勢いよく顔を上げて、けれどその切れ長の緑灰の瞳に憤りにも似た逡巡が過(よぎ)り。
「……………十代目だから、だろ」
「本気で言ってるなら、そんな右腕なら僕はいらないけどね」
馬鹿にしきったその言葉と双眸に、けれど獄寺は黙り込むしかなく。反駁の言葉の一つも浮かばないのは、獄寺自身が告げる言葉を端から信じていないからだ。
誘導されるように行き着いてしまった答えに、頭のどこかで疾うに辿りついていた認めたくなかった現実に、至ってしまったから。長い沈黙の後呟いた言葉は、ただそれを、必死で否定するためだけの、科白。
けれど。だと、したら。
「君が認めたくないのも、分からなくはないけど。だけど実際、六道骸を知らないと言って、あの女を凪だか何だかと呼びながら、沢田綱吉は間近に迫ったイタリア行きを疑問にすら思っていない」
赤ん坊に強制されていた時は、あれほど抵抗していたのに。
「…だけどそれが、すぐに、忘れていないことに繋がるわけじゃねぇだろ…っ?」
雲雀の答えに口を挟んだ獄寺が、重ねるように零した問いは、まるで悪足掻きとも、子供が駄々をこねる様とも、似ている。そのことを充分自覚している獄寺の、ただでさえ目つきの悪い緑灰の瞳は、更に苦々しく眇められ。
そして、明確な言葉を耳にした漆黒の双眸がようやく面白げに光を浮かべる。
「そこまで馬鹿じゃないみたいだね。―――尤も、君はそうだったみたいだけど」
まあ、馬鹿というより鈍いのかもね。
ちらりと流された視線に、未だ分からないままの山本は乾いた笑を浮かべるしかない。
そんな山本にわざとらしく一つ溜息をついて見せた雲雀は、ねぇ、と真っ直ぐに山本を見据えて、言を継ぐ。
「僕が真っ先に君に聞いたのは、もしかしたら君になら沢田綱吉が明確な『言葉』として伝えているかもしれないと思ったからだ。君は、あの後に聞いたんだろう?沢田綱吉が、どうしてイタリアに行くのか」
「……ま、な」
「じゃあ、君は聞いてるんじゃないのかい?どうして沢田綱吉が、ボンゴレ十代目を継ごうとしているのか」
やや歯切れ悪い山本に対し、雲雀の言葉は急いているのかと思うほどに明快で。
元々単刀直入な言い回しの多い人物ではあるが、それにしたって言いようが単純すぎる。もしかしたら、山本に合わせているのかもしれないが。
―――言い逃れなどできぬ、ように。
「聞いたぜ。…でも俺は、守りたいものを守るため、としか聞いてねぇよ。ツナの望みは、中学の時から変わってないけど、ボンゴレを継ぐことでしか守れないことを知ったから継ぐんだ、、って。何だったかな……。ボンゴレは王様だから、って言ってたかな」
ドン・ボンゴレは王様だから。
継がないとできないことが、継ぐだけでできる。
そう言った時の綱吉の表情が、笑っているのにどこか泣いているようで、ひどく痛いようだったのが目に焼き付いて離れない。
けれど山本が感傷に浸るようにその記憶を辿っている間に、同じ情報を得た他の二人は、まるで明確な答えを得たとでも言うように思い切りよく上げた瞳で、山本を射る。
「王様だから、継がないとできないことが継ぐだけでできる、ね」
言い得て、妙。
そう言って、面白がるような雲雀の声は、明らかに言質を得たとでも言わんばかり。対する獄寺の方はと言えば、いささか面白くないような、それでもどこか安堵したような複雑な色を浮かべていて。
「獄寺?ヒバリ?」
一人首を傾げる山本に、今度はあっさりと答えを投げ寄越したのは、雲雀。くすりと、酷薄げな唇が薄く刻むのは、紛れもなく笑み。
そして。
「沢田綱吉がどうして今更、自分の意志でボンゴレを継ごうとしたと思う?誰のためか、そろそろ君も気付いてるんじゃないの?」
なのにどうして、未だイタリアへ行く気でいるんだろうね?
―――その言葉の、意味するところ、は。
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