棺は捨ててしまった



 準備はしたし、手配も終えた。
 日本(ここ)での仕事はもう、ない。
「ママン」
「なあに、リボーンちゃん」
 やわらかに、やわらかに。
 優しく、春のように微笑む女性。
 何年も成長しないリボーンをすら、気味悪がる素振りもなくただ微笑んで、受け容れた。
「明日、オレも出て行くことになった」
「あら…」
 告げれば、寂しげにその表情が曇って。
「そうなの…。残念ね、寂しくなるわ。ツッ君も、行ったばかりなのに」
 ほう、とため息を吐いて。本当に寂しげに、微笑むから。
「…しばらくすれば、パパンが帰ってくるはずだぞ」
 口止めされていたそれを、つい口にする。
 その言葉に、あら、と少しだけ女性の声が弾んで。
 けれど。
「そうなの?そうね、それは嬉しいわ。だけど、リボーンちゃん。リボーンちゃんがいなくなることがさみしいことは、変わらないわ」

「人はね、誰かの代わりにだけは、絶対なれないんだもの」

 それは、良くも悪くも。





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