どこから間違えてしまったんだろうね
―――夢を、見ていた。
それはまだ、短い時しか生きていない自分にとっては大分昔といっていいだろう頃の、記憶。
あれはいつの頃だったろう。
確か、高校に上がったばかりの頃だ。
リボーンがいて、自分がいて。階下からは小さな子どもたちのはしゃぐ声が響いていて。
「解らねぇ奴だな」
ほのぼのとした日常を、一瞬で凍りつかせそうな高い声の冷ややかさ。それに慄きつつも、でも、と返そうとするけれど、すぐに重ねられた高い声に結局遮られる。
「このまま現状維持が、一番安定してるんだぞ」
「だ、だからって、あんな…、あんな暗くて冷たい所に骸が囚われ続けるなんて、おかしいよ!あんな、…水の中だぞ!?一応さ、骸は、ボンゴレの、霧の守護者、なんだし…」
「テメーの霧の守護者は六道骸じゃなくて、クローム・髑髏だろーが」
何とか言い募る綱吉を、けれどリボーンは一顧だにせず。
それでも綱吉は、ここで引くわけにはいかなかったのだ。
「で、もっ!骸にも、いっぱい助けてもらっただろ?それに…っ」
続ける言葉を、果たして告げてよいのか迷う。
あの、頭の中に流れ込んできた光景。
骸が、囮となって捕らわれたこと。
事実ならば、骸の中にも『何か』があったのではないかと、思えてしまう。
そして、自分は。
助けられるかもしれない力をこの手の中に持っているというの、なら。
「ツナ」
続ける言葉を迷う、長いような短い間。
呼ばれた名に俯けていた顔を上げれば、黒目がちの丸い瞳が探るように見据えてくる。
そして。
「オマエ、何を吹き込まれたんだ?」
それは、紛れもなく。
まさしく核心を、突いた問い。
「な、にが?リボーン」
何とか返した問いへの問いは、少し歪みはしたものの答えまでの間が空かなかっただけでも、上等。ついでに言うなら、表情もさして変わっていないだろう。
そんな綱吉を見つめること、数秒。
それから、苛立ちを隠しもしない強い舌打ちを打つと、諦めのように珍しくも折れたリボーンは口を開く。
「ダメツナめ。何で骸があんな姿であんな場所に甘んじているのか、解んねーのか?だからテメーはダメツナなのだぞ」
「……ぇ?」
目を瞠る、綱吉に。
リボーンの声は、畳み掛ける。
「骸とクロームは、切り離せない」
それは嫌というほど、それこそクロームと初めて顔を合わせた日からリボーンが繰り返していること。
しかし次の言葉は、あっさりとその言を翻すもの、で。
「だけどな、それは『今この現状だから』だ」
「もし骸を囚える鎖が切れて、骸が自分の肉体を取り戻せば、クロームという存在は」
「必要(イラ)なくなる」
「在れなくなる」
「だからこそ骸は、まだあそこにある」
「そんなことも解んねぇクセに、ウダウダ言ってんじゃねーぞ」
「まあ、復讐者たちも気づいちゃねーみてーだがな」
「全く、上手くやってやがる」
畳み掛けられる言葉は。
明らかに棘と嫌味を含んで、吐き捨てるよう。
「………」
言葉を失う綱吉の耳には、それだけじゃねーだろーけどな、と苦々しく呟くリボーンの声は、届かなくて。
そんな、呆けたような綱吉をきつく睨めつけたリボーンは、唐突に床に座り込む綱吉の前へと立って、小さな手で胸座(むなぐら)を掴んで引き寄せ。
「オマエは、骸を許すなと言ったオレの言葉の意味を、本当に分かってるか?」
―――見据えてくる漆黒が、重い。
けれど。
「でも、リボーン」
「だったら余計に、オレは 」
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