願望充足型の悪夢




「ねぇ、リボーン。イタリアに行くのってパスポートだけでいいの?ビザとかは?」
 届いたばかりのパスポートを物珍しげに眺めながら、久方ぶりに顔を合わせた自分に問うて寄越した綱吉に。
「……お前、イタリアに行くのか?」
 思わず問うて寄越したリボーンに、は?と綱吉は分かりやすく驚いた表情で、飴色の瞳を見開く。そうすると、出会った頃と何一つ変わっていないように、幼くて。
「当たり前じゃん。お前にも、みんなにも言っただろ?秋になったらイタリアに行く、って」
 ―――十代目ドン・ボンゴレを、襲名する、って。
 何を今更、という風に、当たり前のことのように告げられる言葉に、絶句して。
 リボーン?と不思議そうに小首を傾げる未だ幼さの濃い少年の表情に、リボーンは眇めた瞳で何事かを思案するように、じっと飴色の瞳の奥を覗き込む。
 色素の薄い、琥珀がかった飴色。ひどく透明なその色は、出会った当初とは違いその奥の感情をほとんど覗かせず。
 特に、今は。
「本気か?」
 問う声は、出会った頃と変わらぬままの高さ。
 子供そのままの声に、けれど宿るのは酷く老成した響きで、そこに込められた真剣な強さに、綱吉の方が驚いたように一度ぱちりとその丸い眸を、瞬かせて。

「オレが、決めたんだよ」

 告げる声に、淀みはない。
 ―――それこそが、おかしい。





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