沈黙の距離に打ちのめされた



「利害の一致はあると思いませんか。六道骸―――いえ、」
 ボンゴレの、霧の守護者。
 応じない骸に焦れたのだろうか。
 再び夜の闇に響いた声に、ふと骸の意識は引き戻されて。そして、耳に入った呼称に思い起こすのも、同じ日のこと。
―――そういえば、あの日も、この女は自分のことを『ボンゴレの霧の守護者』と呼んでいた、と回顧する記憶を辿る。
「そう、ですね……」
 思い返す、あの日の取引。
 持ちかけられた、その内容。
 それは決して、『六道骸』にとって分の悪いものでは、ない。
 けれど、彼女たちが執拗に繰り返す『ボンゴレの守護者』としてみた場合、それは紛うことなく背信行為だ。
 ―――沈黙の掟(オメルタ)に、関わるほどの。
 それと同じく、思い返されるのは一年前のあの日とさして時の変わらぬ日のこと。
 盛夏の頃。
 纏い付くような不快な熱気と人いきれ。
 香具師の香気と暗くざわめきを秘めた水の香。
 流れる黒い水面に群れる、送り火。
 その、切ないまでの孤独な群れの、鮮やかさ。
 少女の白の小指に咲いた、涙のような花の雫と。
 ―――哀しいまでに真っ直ぐに見据えてきた、淡い火の光の入った、琥珀めいた飴色。

 クフフ、と一つ、嗤って。
「いいですよ。―――のりましょう」

 裏切ることに躊躇はないのだ。
 はじめから。

 ―――それは、繋がる魂の奥から叫び上げるように響く少女の声ですら、も。






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